Issues in our healthcare system vol.3: Adaptive-Renewal Cycles/Ways of Knowing, Learning, and Developing

Family Medicine Research Review
6 min readSep 7, 2022

by Makoto Kaneko MD, MClSc (Family Medicine), PhD

今回でこのシリーズの紹介は最後となります。

第5回の

第6回の

についてです。

わたし達(本文では主にアメリカを念頭に置いていますが同時に全世界を指しています)の医療システムは「変化」する必要がある。しかし、「変化」とはそもそも何なのか?についての考察が第5回です。

ものごとが変わっていく、という時に何が起きているかを捉えるためにここではpanarchy modelというものが紹介されています。

これは複雑な状況を直線的な考え方で管理しようとすると失敗することが多いという気づきから生まれたもので、

・全体が円環となっていること

・front loopとback loopの2つが組み合わされていること

が特徴です。

上記リンクのFigure 1を見て頂くと分かるのですが

front loopはexploitation(拡大)という段階から始まり、急速に拡大します。それがある程度進むと成長が鈍化し、専門分化するconservation(保守)という段階に至ります。(ここでは第2次大戦後のアメリカの医療システムがその例として取り上げられています)

back loopはconservationの段階が続きひづみが出てきた時にそれまでたまっていたものが開放されるreleaseという段階に達します。その時に新たなイノベーションが起き、その後の再編成(reorganization)という段階に達します。その時にはその前のexploitationでイニシアティブを取っていたのとは異なる新しい実践を行っている人達がイニシアティブを取り新たなexploitationに繋がります。

なかなか観念的で分かりにくい部分もあるのですが、著者らはアメリカの医療システムはconservationの終わり、これからreleaseに向かうタイミングなのではないかと述べています。

この様な変化が起きつつあることを理解してイノベーションを起こしていくこと、それを支援していくことが必要になります。

その時に必要なものとして最終回のways of knowingに繋がっていきます。

第6回では冒頭で、多くの情報が飛び交う現在の社会ではただデータを持っているだけでなく

data-information-knowledge-understanding-wisdom

としてデータを集めた情報(information)、そこから得られる知識(knowledge)、その知識を理解(understanding)すること、理解によって獲得できる知性(wisdom)の違いを強調しています。

そして、「知識の種類」があることをその後に述べているのですがこちらはFigure 1及びFigure 2が分かりやすいです

知識の種類についての2×2表が提示されており

視点の位置:inner (内部/主観)とouter (外部/客観)

視点の数:単数(individual)と複数(collective)

の組み合わせで知識の種類が表現される。

すなわち

inner-individual

inner-collective

outer-individual

outer-collective

である

例えば糖尿病について言えば

inner/individual: 糖尿病というやまいを持って生きるということがどの様な経験であるかに関する知識

inner/collective: 糖尿病治療が家族に与える影響や、糖尿病の自己管理を促進または阻害するケアチームの連携に関する知識

outer/individual: 糖尿病治療薬の薬力学に関する知識

outer/collective: 薬が他の体のシステムにどのように影響するか、あるいはケアのシステムが治療の提供やアドヒアランスにどのように影響するかに関する知識

などが挙げられ、糖尿病や糖尿病を持つ患者を理解するにはこれらの知識がいずれも必要になるとしている

これら4つの象限にはいずれもそれぞれのdataがあり、そこからそれぞれのinformationやknowledgeが生まれる。それを理解し組み合わせることでwisdomを得ることが出来るのである

“Wisdom comes from being able to see an issue from multiple perspectives and discerning ways in which they make sense as a whole.”

そしてこの考え方を家庭医療の研究に当てはめたものがFigure 2である

inner/individual: 医師、患者、医療者、政策決定者、研究者自身の経験に関する知識
inner/collective: 健康や病気に関する家族またはコミュニティ、医療を提供するチームの経験に関する知識
outer/individual: 疾患、治療に関する知識
outer/collective: 個人の健康と周囲のコミュニティ、社会や医療システムとの関連についての知識

これら4象限それぞれについて

data-information-knowledge-understandingという過程を経ることで一つの事象に関するwisdomを得ることが出来るのである(Figure3)

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Family Medicine Research Review

From Japan to everywhere. A group blog by Japanese family physicians and international colleagues. The blog aims to build research capacity and spread studies.