Basics of statistics for primary care research
by Makoto Kaneko MD, MClSc (Family Medicine), PhD
今回からしばらくは量的研究関連の話題になります。Western大学の家庭医療学博士課程で9月から勉強させて貰うのですが、今年度はAdvanced Quantitative Researchというコースを履修することになっており、量的な研究に関して毎週様々な事前課題(論文や教科書の指定の部分を読んでくること)が課されます。その予習とコース内容の紹介を兼ねて事前課題論文を読んだ記録を少しずつ書いていきます。
最初の2週間は現地+オンラインのハイブリッド、その後は全面オンラインとなります。レクチャーを静かに聞くタイプの座学はあまり無く、事前課題を読んできた前提でディスカッションを行うという形になっています。
実は、前回まで紹介していたKurt Stange先生のeditorialを読む、というのがこのコースの一番最初の授業の課題でした。
量的研究(Quantitative research)という名前の授業で一番最初のオリエンテーションでStange先生のEditorial seriesを課題とする、というのが非常に家庭医療的なコースだなと感じました。
そのオリエンテーションを終えた後はOverview of statistical techniques and data analytic approaches Setting up your data for analysesになります。今回はその授業の課題論文から2つをご紹介します。
前者はFamily Medicine and Community Healthという雑誌に掲載されており、「プライマリ・ケア研究のための統計学の基礎」という題名が示す通りで統計の基本をプライマリ・ケア医に伝えるために書かれたものです。
どちらも統計学の基本について分かりやすく書かれています。両者を合わせると
・統計は大きく分けると記述統計(descriptive statistics)と推測統計(inferential statistics)がある
・前者はデータを記述するもので、具体的には代表値、ばらつき、分布などを記述する
・後者は母集団から取られた標本を元に母集団の情報を推測する
・集める変数には大きくは連続変数とカテゴリカル変数がある
・代表値の指標には平均値、中央値、最頻値などがあり、ばらつきの指標には分散、標準偏差、最大値/最小値、頻度などがある
・データを図示する方法としてヒストグラムや箱ひげ図がある
・代表的な推測統計には2群間の平均の差を見るtテスト、3群間以上の平均の差を見るANOVA、2つの連続変数の関連を見る相関、一つの変数から別の変数を予測する回帰、などがある
・統計解析を行う時の10のステップとして
①仮説を決定する
②適切な検定を選択する
③サンプルサイズ計算をする
④データを用意する
⑤まず記述統計から始める(理論的におかしい値が入っていないかの確認、データの代表地、ばらつき、分布の確認などを行う)
⑥検定の前提を満たしているかを確認する
⑦解析を行う
⑧モデルを検証する
⑨結果を報告する
⑩解析の妥当性を検証する
というものを挙げて具体的な例とともに示しています。
Basics of statistics for primary care researchには家庭医向けに統計の基本的な考え方がコンパクトにまとまっておりお勧めの内容です。
今後もこのコースの予習で読んだ文献を紹介していきたいと思います。